腰痛 手術|ヘルニアの手術をする前に知っておくべきこと

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椎間板ヘルニア手術

腰椎椎間板ヘルニアの症状は、腰の痛みの他に、足のしびれや感覚の異常などがみられ、歩くことも困難な人もいます。

なかには、椎間板ヘルニアの腰痛は手術をしなければ治らないと信じられていた時代もあり、椎間板ヘルニア=手術というイメージを持っている人も少なくありません。

ここでは、椎間板ヘルニアで手術を考えている方や、不安を感じている方に腰椎椎間板ヘルニアの症状と手術を避けるために知っておくべきことを詳しくご紹介します。

目次

1. 腰椎椎間板ヘルニアとは

2. 腰椎椎間板ヘルニアの症状と診断

  • 2−1. 腰椎椎間板ヘルニアの症状
  • 2−2. 腰椎椎間板ヘルニアの診断
  • 2−3. 腰椎椎間板ヘルニアと症状は無関係?

3. 腰椎椎間板ヘルニアの原因

4. 腰椎椎間板ヘルニアの保存療法

5. 腰椎椎間板ヘルニアの手術療法

  • 5−1. 腰椎椎間板ヘルニアの手術療法
  • 5−2. 腰椎椎間板ヘルニアの手術成績
  • 5−3. 腰椎椎間板ヘルニアの再手術
  • 5−4. 緊急手術が必要な腰椎椎間板ヘルニア

6. 腰部椎間板ヘルニア まとめ

1. 腰椎椎間板ヘルニアとは

腰椎椎間板ヘルニアとは、20代から40代の男性に多く(男女比2〜3:1)腰や足の痛み・しびれを伴う疾患です。

背骨(脊椎)を構成する腰の部分の骨(椎体)は5つ(L1〜L5)あります。

椎間板はそれぞれの骨と骨の間にあり、荷重を分散させるクッションの役目をしています。

何らかの原因で椎間板が潰れ、骨と骨の間から飛び出した状態を椎間板ヘルニアと呼びます。

椎間板が飛び出た(突出・脱出)程度により、髄核膨隆、髄核突出、髄核脱出、髄核分離などに分類され、この飛び出した椎間板が神経を圧迫して、腰や足の痛み・しびれを引き起こしていると考えられています。

椎間板ヘルニアは、腰椎の下の方(L4とL5の間、L5と仙骨の間)で多く発生しますが、年齢とともに高い位置(L2とL3、L3とL4の間)で発生する確率が高くなるとも言われています。

2. 腰椎椎間板ヘルニアの症状と診断

2−1. 腰椎椎間板ヘルニアの症状

腰椎椎間板ヘルニアの症状は、腰の痛みの他に、足のしびれや感覚の異常などがみられます。

  • 腰から足にかけて(おしり、太もも、ふくらはぎ、すね)の痛みやしびれ
  • 咳やくしゃみをすると痛みが強くなる
  • 腰の下部(L5付近)の痛み
  • 座骨神経に沿った痛み など

2−2. 腰椎椎間板ヘルニアの診断

日本の腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドラインでは、腰椎椎間板ヘルニアの診断基準を以下のように定めています。

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会提唱の診断基準

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会提唱の診断基準

腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン改訂第2版.日本整形外科学会診療ガイドライン委員会,腰椎椎間板ヘルニア診療ガイドライン策定委員会 .2011年7月15日発行

注:SLRテストとは、仰向けに寝て、膝を伸ばしたまま片脚を持ち上げて行う腰椎椎間板ヘルニアを見分けるテストです。

痛みで脚を70度以上持ち上げられないと、腰椎椎間板ヘルニアの可能性があると言われています。

2−3. 腰椎椎間板ヘルニアと症状は無関係?

腰椎椎間板ヘルニアと診断されても腰の痛みや足のしびれなどの症状がでない人もいます。

腰椎椎間板ヘルニアと診断されても必ずしも痛みやしびれの原因がヘルニアであるとは限りません。

20~80歳までの腰痛未経験者67名を対象にMRIで腰部椎間板を分析した結果、21~36%に椎間板ヘルニアが、50~79%に椎間板膨隆が、34~93%に椎間板変性が確認されたことから、手術の選択は慎重にすべきと結論。

Boden SD, Davis DO, Dina TS, Patronas NJ, Wiesel SW.J Bone Joint Surg Am. 1990 Mar;72(3):403-8 PMID:2312537

21~80歳までの腰痛未経験者52名を対象にCATスキャンで腰部椎間板を分析した結果、年齢に関わらず35.4%に何らかの異常が検出され、40歳未満の19.5%に、40歳以上の26.9%に無症候性椎間板ヘルニアが確認。

Wiesel SW, Tsourmas N, Feffer HL, Citrin CM, Patronas N.Spine (Phila Pa 1976). 1984 Sep;9(6):549-51.PMID:6495024

3. 腰椎椎間板ヘルニアの原因

今まで、スポーツや重労働、車の運転など腰への負担が腰椎椎間板ヘルニアの発生要因とされてきました。

しかし、実際の統計や研究調査を行った結果、これらの要因と腰椎椎間板ヘルニアの関係については明らかな因果関係は認められていません。

また、若年層の腰椎椎間板ヘルニアの発生には遺伝的要因が関与しているという研究報告もあります。

腰の痛み≠ヘルニア

前述したように腰椎椎間板ヘルニアという画像検査上の異常と、腰や足の痛み、しびれといった症状は必ず一致するというものではありません。

腰や足が痛くて画像検査をしたら腰椎椎間板ヘルニアが見つかっただけで、腰椎椎間板ヘルニアだから腰や足が痛くなった訳ではありません。

腰や足の痛み、しびれの原因=腰椎椎間板ヘルニアではなく、腰椎椎間板ヘルニアは症状のない人にもみられる一般的なものなのです。

椎間板ヘルニアと診断された強い腰下肢痛を訴える患者46名と、年齢、性別、職業などを一致させた健常者46名の腰部椎間板をMRIで比較した結果、健常者の76%に椎間板ヘルニアが、85%に椎間板変性が確認された。

Boos N, Rieder R, Schade V, Spratt KF, Semmer N, Aebi M.Spine (Phila Pa 1976). 1995 Dec 15;20(24):2613-25.PMID:8747239

この報告では、椎間板に異常が見られない人の方が少数という結果になっています。

腰椎椎間板ヘルニアだから腰や足の痛み、しびれといった症状がでるというよりは、むしろ、腰椎椎間板ヘルニアの画像所見と症状は関連性がなという結果になっています。

腰下肢痛患者246名を対象にMRI所見と保存療法の治療成績について2年間追跡した結果、椎間板ヘルニアは腰痛患者の57%、下肢痛患者の65%に検出されたものの、治療成績とヘルニアのタイプ、大きさ、活動障害は無関係だった。

Modic MT, Obuchowski NA, Ross JS, Brant-Zawadzki MN, Grooff PN, Mazanec DJ, Benzel EC.Radiology. 2005 Nov;237(2):597-604.PMID:16244269

4. 腰椎椎間板ヘルニアの保存療法

腰椎椎間板ヘルニアの治療法には保存療法と手術療法があります

結論からいうと、腰や足の痛み、しびれの原因=腰椎椎間板ヘルニアではないので、腰椎椎間板ヘルニアに限定した治療法はありません。

あるのは、腰や足の痛み、しびれといった症状を改善する方法と、腰椎椎間板ヘルニアという画像上の異常を修正する(椎間板ヘルニアを摘出する)方法です。

腰椎椎間板ヘルニアの保存療法

  • 薬物療法:非ステロイド性消炎鎮痛薬(NSAIDs)・筋弛緩薬・オピオイド鎮痛薬・神経性疼痛緩和薬
  • ブロック注射:腰部硬膜外ブロック・仙骨部硬膜外ブロック・神経根ブロック
  • 運動療法
  • 温熱療法
  • 装具療法:腰椎バンド・コルセット
  • 牽引療法 など

同じ保存療法でも効果があるとする論文もあれば特に効果は認められないという論文もあり、決定的な保存療法はありません。

ただし、薬やブロック注射による副作用には注意が必要です。

椎間板ヘルニアか脊柱管狭窄症と診断された腰下肢痛患者73名を対象とした硬膜外ブロックに関するRCT(ランダム化比較試験)によると、ステロイド剤+局所麻酔剤群と生理食塩水+局所麻酔剤群(偽の注射)の間に改善率の差は認められなかった。ステロイド注射は無効?

Cuckler JM, Bernini PA, Wiesel SW, Booth RE Jr, Rothman RH, Pickens GT.J Bone Joint Surg Am. 1985 Jan;67(1):63-6.PMID:3155742

5. 腰椎椎間板ヘルニアの手術療法

腰椎椎間板ヘルニアの手術の目的は、椎間板ヘルニアを摘出して症状を改善することです。

症状とヘルニアの関係は明らかになっていませんが、手術をすることで症状が改善する人が存在することも事実です。

しかし、椎間板ヘルニアは摘出しなくても自然に消失、退縮することは珍しくありません。

新潟がんセンター整形外科が行なった後ろ向き研究によると、手術をしなくても非内包性椎間板ヘルニア(椎間板脱出・遊離脱出)は約8週間で自然に消失する事実が明らかとなり、この方針に従って椎間板手術の年間件数を50%低下させることに成功。

Ito T1, Takano Y, Yuasa N.
Spine (Phila Pa 1976). 2001 Mar 15;26(6):648-51.PMID:11246377

5−1. 腰椎椎間板ヘルニアの手術療法

  • 椎間板切除術( LOVE 法 )
  • 内視鏡下ヘルニア摘出術(MED)
  • 顕微鏡下ヘルニア摘出術(MD)
  • 経皮的レーザー椎間板減圧術 ( PLDD )
  • 経皮的髄核摘出術 ( PN )
  • 椎弓切除術 ( ついきゅうせつじょじゅつ )
  • 脊椎固定術 など

5−2. 腰椎椎間板ヘルニアの手術成績

保存療法と手術療法の治療成績を比較すると、短期的(1〜4年)には手術療法のほうが優れているが、時間の経過とともにその差は減少する。

手術費用や合併症などのリスクを考えると、歩行困難などの日常生活に支障がある人や保存療法で何年も改善しない人など、腰椎椎間板ヘルニアで手術療法を選択する人は限られてきます。

坐骨神経痛を訴える椎間板ヘルニア患者126名を対象に、保存療法群とラブ法群の治療成績を10年間追跡したRCT(ランダム化比較試験)によると、1年目まではラブ法群が優れていたが4年目以降は両群間に差はなくなっていた。長期成績は両群とも同じ。

Weber H.Spine (Phila Pa 1976).1983 Mar;8(2):131-40.PMID:6857385

2年間にわたる追跡調査によると、坐骨神経痛を有する椎間板ヘルニアの手術は保存療法より有益とはいえない。職場復帰率や長期活動障害率においても手術の優位性は認められなかった。坐骨神経痛は手術を受けるか否かに関わらず時間が経てば改善する。

Atlas SJ, Tosteson TD, Blood EA, Skinner JS, Pransky GS, Weinstein JN.Spine(PhilaPa1976).2010Jan1;35(1):8997.doi:10.1097/BRS.0b013e3181c68047.PMID:20023603

椎間板ヘルニアに対する手術に関する論文81件を厳密に検討した結果、椎間板ヘルニアの手術成績は短期的に見れば良好だが長期的に見れば保存療法とほとんど変わりがなく、心理社会的因子の影響を強く受けていることが確認された。

Hoffman RM, Wheeler KJ, Deyo RA.J Gen Intern Med. 1993 Sep;8(9):487-96.PMID:8410420

注:心理社会的因子については腰痛 原因|腰痛の再発と慢性化に影響を与える7つの要因を参考にして下さい。

腰椎椎間板ヘルニアの手術の有効性を証明する根拠は乏しく、疑問視、または否定する論文が多く存在します。

腰椎椎間板ヘルニアにおける手術療法は最後の手段といえます。

5−3. 腰椎椎間板ヘルニアの再手術

腰椎椎間板ヘルニアにおける手術療法は最後の手段だが、1回の手術で症状が改善するとは限らない。

手術前と変わらなかったり、悪化して再手術を受ける人もいる。

そして、手術回数が増えれば増えるだけ治療成績は低下するという報告もある。

腰痛疾患で再手術を受けた患者179名を対象とした研究によると、手術の成功率は2回目で45%(20%は悪化)、3回目では25%(25%は悪化)、4回目では15%(45%は悪化)であることが判明。

waddell G.et al.J Bone Joint Surg Am.1979

注:ヘルニア摘出術後の再手術率は5年後で4~15%

5−4. 緊急手術が必要な腰椎椎間板ヘルニア

椎間板ヘルニアで唯一、緊急の手術を要するものがあります。

それは、腰部椎間板ヘルニアによる馬尾症候群です。

膀胱直腸機能障害を伴う重篤な神経疾患で、脚の感覚の低下や運動障害、膀胱、直腸機能を改善するには発症後48時間以内の手術が必要とされています。

1.排尿障害 尿失禁または尿が出ない
2.性機能の低下
3.排便障害  肛門括約筋の緊張が減少または便失禁
4.座骨神経痛  下肢(脚)の脱力やしびれ
5.サドル麻痺  肛門や会陰部の感覚の低下(自転車のサドルに触れる部分)

特に急性の腰痛で上記の症状が複数当てはまれば要注意です。

腰部椎間板ヘルニアによる馬尾症候群の手術成績に関する研究をメタ分析した結果、発症後48時間以内に除圧術を行なったほうが48時間以降に行なうより知覚障害・運動麻痺・膀胱直腸障害の改善率は良好であることが明らかとなった。

Ahn UM, Ahn NU, Buchowski JM, Garrett ES, Sieber AN, Kostuik JP.Spine (Phila Pa 1976). 2000 Jun 15;25(12):1515-22.PMID:10851100

6. 腰部椎間板ヘルニア まとめ

  1. 画像所見で腰部椎間板ヘルニアと診断されても必ずしも症状とは一致しない
  2. 腰部椎間板ヘルニアは成人の一般的な現象で症状を伴わないものも多く存在する
  3. 腰部椎間板ヘルニアは自然に消失・退縮する
  4. 腰部椎間板ヘルニア=手術という選択は最後の手段であり、長期成績は保存療法と変わらない
  5. 腰部椎間板ヘルニアの手術は手術回数が増えるほど治療成績が低下する
  6. 腰部椎間板ヘルニアによる馬尾症候群は緊急手術が必要

椎間板に異常があっても、ほとんどの人は手術をしなくても症状は改善します。

腰部椎間板ヘルニアの治療法の選択肢は保存療法を優先し、手術は最後の手段と考えます。

手術は腰部椎間板ヘルニアによる馬尾症候群や、生活に支障を及ぼす一部の人に限るべきで、急いで手術をすることにリスクを上回るだけのメリットはありません。

腰部椎間板ヘルニアの症状を改善するのに手術費用や入院期間、リハビリを心配する必要はありません。専門家がこう答えていますから。

腰痛の原因はいまだに謎だが、椎間板変性を腰痛の原因と考える脊椎外科医は23%のみで、その患者に固定術か椎間板置換術を選択すると答えた脊椎外科医はわずか1%しかいない。もし自分が患者なら99%が保存療法か放置すると回答。

Hanley EN Jr, Herkowitz HN, Kirkpatrick JS, Wang JC, Chen MN, Kang JD. J Bone Joint Surg Am. 2010 May;92(5):1293-304. doi: 10.2106/JBJS.I.01439.PMID:20439681

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コメント

  1. tellme より:

    突然 すみません。
    娘のダンナさん(30歳)が4度目のヘルニア発症しブロック注射を定期的に 施しながら今は落ち着きつつあります。
    が 群発頭痛も持病であります。
    偶然なのかもしれませんが ヘルニアが 治ると 頭痛が発症
    …薬の影響なのでしょうか
    ????

    1. Hayasaka より:

      コメントありがとうございます。
      痛み回復センター東京では、痛み=筋肉の緊張という考え方をします。
      腰痛は腰、背中、股関節等の筋肉が緊張しています。
      頭痛は首、肩、肘等の筋肉が緊張しています。
      薬物療法をしていなくても、痛みの場所が移動するということはよくあります。
      腰痛でも頭痛でも、筋肉の緊張する場所が変わっただけで、基本的な考え方は同じです。

      解決するポイントは、少し気を抜いてすごすことです。
      体の痛みにだけ注目していては慢性の痛みは解決しません。

      30〜40代というのは、プライベートでは結婚や新居、出産、育児。
      仕事では責任のある仕事を任せられたりして、環境が大きく変わる年代でもあります。
      環境が変わり、心も体も気が抜けない毎日をすごしていませんか?
      心が緊張すると、体も緊張してしまいます。
      真面目で頑張り屋、責任感の強い人は特に気をつけてください。

      テクニック的なことをお伝えすると、頭痛の場合は、首以外に、肘の内側、肩の付け根、鎖骨の内側の筋肉が
      緊張しているケースがほとんどです。
      上記の場所を指で押し、痛みやコリを感じるところに軽く指をあて、ゆっくり肘や首を動かしてください。
      また、首、肩の付け根、鎖骨の内側の痛みのあるところに軽く指をあて、腕をだらんと下げたままブラブラ振るのも効果があります。

      他にも色々なやり方はありますが、基本は、無意識に力が入った状態の筋肉の力をぬくことです。
      力が抜ければ痛みも抜けます。

      今後、具体的なテクニックについての記事を増やしていく予定なので、不明な点や疑問などがあればまたコメントを
      お願いいたします。

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