好きな人が近づいてきた時、嫌な人が近づいてきた時、人は緊張し、脈拍数は上がり、汗が出る。
善い感情も、悪い感情も心を緊張させて肉体に生理的な変化をもたらすのです。
ストレス、刺激と呼ばれているものが心を緊張させ、肉体を緊張させるのです。
そして、心の緊張、肉体の緊張が継続した状態、緊張が解けない状態が「痛み」となって現れるのであります。
ゆえに、「痛み」とは肉体の緊張であり、肉体の緊張は心の緊張であるといえるのです。
「痛み」と筋肉の緊張
腰が痛い、肩が凝る、首が痛いという時の筋肉というのは硬くなっているのであります。
筋肉が硬いというのは筋肉が収縮している状態、力が入っている状態です。
また、縮む筋肉と伸びる筋肉は一対、ペアでありますから、伸ばされている筋肉もまた硬いのであります。
この筋肉が硬い状態、筋肉が緊張した状態が続くと「痛み」となって現れるのです。
ここでいう筋肉の緊張とは筋肉の力が抜けない状態、無意識に緊張している筋肉のことを示すのであります。
筋肉は通常、ゴムのように伸び縮みするものでありますが、無意識に緊張している筋肉というものは、硬くなったゴムのように伸縮幅が減少し、やがて筋肉の動きを制限するのであります。
そして、硬く、動きが制限されている筋肉を動かす時に筋肉の痛みとなり、筋肉の付け根である関節の痛みになるのであります。
また、筋肉の緊張は、「痛み」の他に、力が入らない、スムーズに動かないといった現象をもたらし、捻挫や怪我、転倒なども引き起こすのであります。
筋肉を使うこと、力を入れることが問題なのではありません。
筋肉は使えば使うほど、どんどん鍛えられ、強くなっていくようにできているのです。
逆に動かさなければ、ばどんどん動かなくなるのであります。
筋肉が正常な状態であれば、どんなに力を入れても、どんなに動いても、いわゆる「痛み」にはならないのであります。
なぜなら、力が抜けると同時に筋肉は回復へ向かうからであります。
問題は筋肉が緊張し続けること、緊張が抜けないこと、緊張に気づかないことなのです。
事故や怪我による「痛み」も、事故の瞬間、怪我をした瞬間に筋肉が緊張し、硬直するためにおこるのです。
ムチ打ちや怪我が治った後も続く後遺症の痛みも、硬直した筋肉が弛緩(緩まない状態)しないためにおこる「痛み」であります。
筋肉という視点から見れば「痛み」の原因とは、無意識に緊張している筋肉であり、意識的に力を抜くことがことができない筋肉であります。
ここでは筋肉という表現を使っておりますが、腱鞘炎などの腱、腸脛靱帯炎などの靭帯も同じ理由により「痛み」を発生させるのであります。
「痛み」と心の緊張
朝、首が痛い、腰が痛いという人は寝る前の心の状態に気をつけて頂きたいのであります。
寝る前に
「明日は何時に起きなきゃいけない。」
「起きたらあれもこれもやらなきゃいけない。」
「今日はこんな嫌なことがあった。」
「また明日も腰が痛くなったらどうしよう。」
など、心を緊張させたまま寝てしまう人も多いのであります。
心が緊張していては体も緊張せざるをえないのであります。
寝ている間も体が緊張しているのであるから、いくら寝ても疲れが抜けない、首が痛い、腰が痛いとなるのであります。
また、慢性疼痛の場合は、「痛くなりそうな動き」をする時に、すでに「痛くならないよう」に体を緊張させているのであります。
意識的には動こうとしていても、無意識的に動かさないように筋肉は作用し、動かそうとする筋肉と動かすまいとする筋肉が綱引きをするのであります。
無意識的に動かすまいとする筋肉が違和感や「痛み」となり無言の抵抗をするのであります。
恐怖や不安、怒りや悲しみなどの感情が心の緊張を生み、心の緊張が体の緊張を生み「痛み」となって現れる。
「痛み」は新たな心の緊張、体の緊張となり新たな「痛み」を生むのであります。
つまり、慢性の「痛み」とは慢性の「心の緊張」なのであります。
心の緊張が腰に現れれば腰痛となり、肩に現れれば肩こりになり、胃に現れれば胃痛となるのであります。
「痛み」とストレスは無関係
「ストレスは健康に良くない」
「ストレスが原因で病気になる」
「腰痛の原因はストレスである」
何かにつけてストレスは悪者にされがちであります。
ストレスとは本来「刺激」という意味であります。
好きな人に会うのもストレス、嫌いな人に会うのもストレスであります。
ストレスは本当に悪者でありましょうか。
好きな人に会うと病気が長引いたり腰痛が悪化するのでしょうか。
否、悪化するどころか、病気や腰の痛みなどはどうでもよくなるのであります。
変化は「刺激」をともないます。
環境が変わるというのは大きなストレスであります。
就職、転職、昇進などによる職場環境の変化。
結婚、出産、育児による生活環境の変化。
環境の変化、ストレスがきっかけで「痛み」を引き起こす人が多いのも事実です。
具体的には、不安や責任感、プレッシャーによるストレスです。
新しい環境による不安、経営者や管理職、親になるという責任感やプレッシャーというストレスが大きければ大きいほど心は緊張するのです。
この時、ストレスをどう受け止め、どう変換するかにより体の反応が異なるのであります。
未来の不安や恐怖を予測、想像してドキドキするのか、新しい事への挑戦と捉えてワクワクするのかで体の反応は異なるのです。
不安や恐怖が強ければ「痛み」や病を発し、ワクワクや幸福感が強ければ健康を発するのであります。
同じ「ストレス・刺激」も受け取る人によって良い刺激にもなれば、悪い刺激にもなるのであります。
このように「ストレス」自体には善いも悪いもないのであります。
また、「ストレス」のない生活というのもないのであります。
この、誰にでもあり、善も悪もないストレスを悪者にしているのが
「ストレスは健康に悪い。」
という誰かが作った概念であります。
一般的にストレスを感じると心拍数は上がり、血管は収縮します。
この心の緊張状態が続くと様々な疾患の原因となり死亡率は上昇します。
しかし、ある研究では
「ストレスを感じるのは良いことだ。」
と信じている参加者(被験者)は心拍数の上昇や血管の収縮というストレス反応はみられないというのであります。
また、ストレスが死亡率を上昇させるのではなく、「ストレスは健康に悪いという信念」が死亡率を上昇させるという結果になったのであります。
「ストレス反応は新しいことに挑戦する際の良いサインだ。」
と思うことでワクワクした状態、ポジティブな状態になり、体は健康に向かうというのであります。
私たちは「ストレスは健康に悪い。」という概念を否定し、ストレスを味方にすることもできるのであります。
視点を変えることによって「ストレス」は善にもなり悪にもなるのであります。
心が明るい方向に向く時、心の緊張、「健康に悪いストレス」は消え、「痛み」も病も消えるのであります。